今日は朝から空がうす暗く、昼近くなっても
冬のように冷たい空気で、心も晴れない。
先週は、走りに行く時間があまりとれなかったので、
今日はゆっくり時間をかけて走ろうと思っていたが、
外の様子を見ているとあまり気が進まない。
それでもまあ、とにかく外へ出てみよう。
ということで、ランニングウェアに着替え、
MP3プレイヤーを持って外へ出た。
やはり、思っていたとおりの寒さだ。
いつもはウォーミングアップ代わりに、
公園までゆっくり歩いていくのだが、
この寒さを少しでも和らげたいと、思わず
走り出してしまう。
いつもよりやや、ペースを速めて走り出すと、
胸いっぱいに吸い込む空気も、冬のそれと変わらず、
一気に体の中に、冬の冷気が取り込まれていくようだ。
私は休日にランニングをするとき、いつもの周回コースを
3~4周したあと、最後に必ず、木の植えてある土の上を
走るようにしている。
アスファルトの上を走るだけでは何となく、味気ない感じが
するからだ。
陸上競技用のトラックや、野球場の周囲に、たくさんの
木が植えてあり、秋は紅葉をが楽しめる。
今日も、周回コースを3回まわったあと、公園に戻って
木々の間をゆっくり、土を踏みしめながら走っていた。
土を踏む感覚、それに時々、木の根っこを踏む感覚に
少し気分が良くなってくる。それに加えて今日は、落ち葉
を踏みしめる音が加わった。
MP3プレイヤーではクラシックの室内楽を聴きながら。
落ち葉の散歩道に、モーツァルトの弦楽四重奏。
案外この組み合わせはイイなあ、と思う。
くもりぞらに紅葉の風景、この音楽。
心がしっとり落ち着くようだ。
海外の風景とBGMを収録した映像や、つい憧れてしまう
ような美しい風景写真を掲載した雑誌などを見かけるが、
そんなのよりも、自分の足でこうして踏みしめている
土のにおい、落ち葉を踏む音、色づき始めた木の葉の
風景の中に、実際にいる方が味わい深いと思う。
映像を見て異国に憧れたり、旅情を掻き立てられるのも
いいかもしれないが、自分がこうして生きている土地を、
もっと味わいたいと感じた。
何気ない日常の風景に、もっと目を向けてみよう。
普段は気づかない何かが、そこには見える。
私は、宮沢賢治という童話作家のことがとても好きだ。
賢治の童話で特に好きなのは、自然描写の美しさ。
素朴な自然を、心ゆくまで味わってみたいという
気分にさせてくれる。
賢治の世界に描写されている自然というのも、
何気ない日常の世界なのだ。
決して特別なものではないのだ。
普段なかなか目を向けない、あるいは忘れていた、
すぐそこにある自然を、とてもていねいに描いている
賢治の世界が、私はとても好き。
今日走っていて味わったのは、そんな世界に近い
ものだったと思う。
この中に身を委ねている自分が、とても幸せに感じた。
うす暗い寒空の下、とても満ち足りた気分を味わった。
何気ない日常の風景に、もっと目を向けてみよう。
普段は気づかない小さな幸せが、そこには見える。
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